青森菱友会

龍飛の黒神

作: 竹浪 比呂央




 その昔、本州と北海道がまだ陸続きだったといわれる頃、十和田湖のほとりに美しい女神(めがみ)が暮らしていた。この湖をはさんで男鹿(おが)には赤神 (あかがみ)が、そして岩木山(いわきさん)の北・龍飛(たっぴ)には黒神(くろがみ)が住んでいた。笛の名手の赤神は、語ることばも優しかった。一方黒 神は筋骨隆々としてその風貌も荒々しく、つき従う四頭の龍をあやつり、自在に天空を駆けめぐっていた。この二人が共に女神を好きになり、お互いゆずらずと うとう争いとなってしまう。
 天地も割れんばかりのすざましい戦いとなるが、やがて黒神が勝利し傷ついた赤神は男鹿に帰っていった。ところが、かわいそうに思った女神は赤神の後を追って男鹿に行ってしまったのである。
 戦いには勝ったものの、女神のいない湖を去り龍飛に戻った黒神は深い深いため息をついた。それがあまりに大きかったため足下から大地は裂け、東西の潮が一気にどっと流れ込んできた。こうしてできたのが津軽(つがる)海峡だと言われている。
 古代天地創造の神々たちの伝説に残る津軽海峡。
 現在、その海峡下を通る青函トンネルによって本州と北海道は再びしっかりと結ばれている。


≪ 東北電力ねぶた愛好会 2002年の大型ねぶた紹介 青森大学 ≫
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